念願だったパキポディウム・グラキリスやアガベ。安くはない買い物をしたからこそ、絶対に枯らしたくない。そう思ってネットで育て方を検索すると、必ずぶつかる壁があります。
「結局、土は何を使えばいいの?」
ホームセンターに行けば無数の種類の用土が並び、ネットを見れば「自分で配合しろ」というマニアックな意見ばかり。初心者のあなたが迷うのも無理はありません。しかし、断言します。塊根植物を枯らす原因の9割は、土選びの失敗による根腐れです。
逆に言えば、正しい土さえ選べば、あなたの植物は日本の環境でも驚くほど元気に育ちます。
この記事では、塊根植物(コーデックス)の栽培歴豊富な私が、「初心者におすすめの市販の土ベスト5」と、慣れてきたら挑戦してほしい「プロ級の黄金比配合レシピ」のすべてを公開します。難しい理屈は抜きにして、これを真似すれば失敗しない。そんな最短ルートの正解を、この記事で手に入れてください。
なぜ土で枯れるのか?塊根植物に普通の培養土がNGな理由

多くの初心者がやってしまう最大のミス。それは、ホームセンターで一番安く売っている「花と野菜の培養土」を使ってしまうことです。パンジーやチューリップには最高の土ですが、塊根植物にとっては、それは「死のベッド」に等しい環境かもしれません。
なぜなら、塊根植物の故郷(マダガスカルやメキシコなど)と、私たちが住む日本の環境はあまりにも違うからです。
根腐れの正体は窒息です
「水をやりすぎて根腐れした」という話をよく聞きますが、正確には水そのものが毒なわけではありません。土の中が水で満たされ続け、酸素がなくなったことによる「根の窒息死」が根腐れの正体です。
一般的な草花用の土は、保湿性が非常に高く作られています。これは湿潤な気候を好む植物には良いのですが、乾燥地帯で進化し、根で呼吸を盛んに行う塊根植物にとっては、息ができない状態が何日も続くことを意味します。その結果、嫌気性の菌が繁殖し、根がドロドロに溶けてしまうのです。
目指すべきは団粒構造のある土
では、どんな土が良いのか。キーワードは団粒構造です。
【良い土の3条件】
- 排水性:水やりをした直後、サーッと水が鉢底から流れ出る。
- 通気性:土の粒と粒の間に隙間があり、新鮮な酸素が通る。
- 保肥性:必要な栄養分を適度に保持できる。
砂粒のような細かい土ではなく、ゴロゴロとした粒状の土を使うことで、土の中に「空気の通り道」が確保されます。これを専門用語で団粒構造(だんりゅうこうぞう)と呼びます。私たちが目指すのは、この構造を人工的に作り出し、日本の梅雨や冬の寒さでも根が呼吸できる環境を整えることなのです。
初心者や忙しい人向けプロも認める塊根植物の土おすすめ市販5選

「配合の理屈はわかったけれど、マンション住まいで土を広げるスペースがない」「まずは手軽に市販品で済ませたい」という方も多いでしょう。安心してください。最近の市販品は非常に品質が高く、プロでも愛用者がいるほどです。
ここでは、私が実際に使用し、「これは間違いない」と確信した5つの商品を厳選しました。
1. プロトリーフ 室内向け観葉多肉の土
もしあなたが「室内管理がメイン」で、「虫が大嫌い」なら、迷わずこれを選んでください。
この土の最大の特徴は、たい肥などの有機物を一切使っていないこと。有機物はコバエなどの餌になりますが、この土は鹿沼土やパーライトなどの無機質素材だけで構成されているため、虫が寄り付きにくいです。また、水を含むと色がはっきりと変わるため、「水やりのタイミング」が一目でわかるのも初心者には嬉しいポイントです。
手が汚れにくく、リビングに置いても清潔感を保てる、現代のライフスタイルに最も適した土と言えるでしょう。
2. 花ごころ 塊根植物の土
園芸用品の老舗メーカー「花ごころ」が出している、その名の通り塊根植物専用の培養土です。
この土の素晴らしい点は、メーカーが長年の研究で導き出したバランスの良さです。排水性を極限まで高めつつ、肥料成分も適度に含まれているため、植え替えてすぐに植物が安定します。「配合とかよくわからないけど、とりあえず専用のやつが欲しい」という方は、これを買っておけば間違いありません。パッケージもチャック付きで保存に便利です。
3. BANKS Collection Best Soil Mix
「せっかく高いグラキリスを買ったのだから、土も最高級のものを使いたい」。そんな本物志向のあなたにおすすめなのが、BANKS Collectionの「ベストソイルミックス」です。
熱帯植物栽培家の杉山拓巳氏が監修したこの土は、徹底的に硬質の赤玉土と鹿沼土を使用しており、数年経っても土が崩れません。つまり、植え替えの頻度を減らせるということです。価格は他の土より高めですが、大切な植物の命を守る保険と考えれば、決して高くはない投資です。
4. エリオクエスト 賢者の土
南アフリカの希少植物を専門に扱うショップが開発した、マニアックかつ信頼性の高い土です。
「根腐れ」にとことんフォーカスして作られており、排水性の高さはトップクラス。水やりが好きな人(つい水をやりすぎてしまう人)でも、この土なら水がすぐに抜けるため、失敗のリスクを大幅に減らせます。特に、乾燥を好むパキポディウムやアガベ・チタノタとの相性は抜群です。
5. コスパ枠 プロトリーフ 多肉植物の土
「植物の数が多くて、高い土ばかり使っていられない」という方には、ホームセンターでも手に入りやすいプロトリーフの「多肉植物の土」が最強のコスパ枠です。
安価ですが、基本性能である排水性はしっかりと確保されています。初期肥料も入っているため、買ってきてそのまま植え付けるだけでOK。私は、普及種のアガベや、大量に実生(種から育てること)をする際には、この土をベースに少しアレンジして使っています。
中級者へヒロセ流黄金比配合レシピ公開!これで根腐れ知らず

市販の土も素晴らしいですが、植物栽培の沼にハマると、どうしても「自分で最高の土を作ってみたい」という欲求が湧いてきます。また、自分の栽培環境(日当たりや風通し)に合わせて土を調整できるのが、自家製配合の最大のメリットです。
ここでは、私が数々の失敗と実験を繰り返し、現在メインで使用している「ヒロセ流・黄金比配合レシピ」を包み隠さず公開します。
【決定版】塊根植物の土・黄金比レシピ
- 硬質赤玉土(小粒): 4
- 日向土(小粒): 3
- 軽石(小粒)またはゼオライト: 2
- 燻炭(くんたん)またはバーミキュライト: 1
※さらに、元肥として「マグァンプK(中粒)」を規定量混ぜ込みます。
最強の配合比率は赤玉4:日向3:軽石2:調整1
この比率に行き着いた理由。それは「水持ちと水はけの究極のバランス」です。
ベースとなるのは日本の園芸の基本である赤玉土ですが、それだけでは崩れやすく水はけが悪くなります。そこで、極めて硬く排水性の高い日向土を3割混ぜ込むことで、物理的に水が抜ける構造を作ります。さらに軽石(またはゼオライト)を加えることで、根腐れ防止効果と通気性を底上げしています。
この「4:3:2:1」のバランスは、日本の平均的な気候において、春〜秋の成長期に土が乾くサイクルが早すぎず遅すぎず、ちょうど良いリズムを生み出します。
隠し味はくん炭とマグァンプK
最後の「1」にあたる部分。ここには「籾殻くん炭(もみがらくんたん)」を入れるのが私のこだわりです。くん炭はアルカリ性のため、酸性に傾きがちな土壌を中和する役割があります。さらに、多孔質であるため微生物の住処となり、根の張りを良くする効果も期待できます。
そして、忘れてはいけないのが緩効性肥料のマグァンプKです。塊根植物は強い肥料を嫌いますが、土の中にじわじわと効く肥料を最初に混ぜておくことで、植え替え後の根の立ち上がりが圧倒的に良くなります。
微塵抜きがプロと素人の分かれ道

配合レシピと同じくらい、いやそれ以上に重要な作業があります。それが「微塵(みじん)抜き」です。
買ってきた土の袋の底には、粉状になった土(微塵)がたくさん溜まっています。これをそのまま混ぜてしまうと、水やりをした時に粘土のように固まり、せっかく作った隙間(団粒構造)を埋めてしまいます。これが原因で根腐れするケースが後を絶ちません。
配合する際は、必ず100均のフルイで構いませんので、徹底的に粉を落としてください。この一手間を惜しまないかどうかが、プロとアマチュアの決定的な差となります。
配合に使う基本用土の選び方と違いを徹底解説
「赤玉土なら何でもいいの?」いいえ、違います。ここでは、レシピに登場した各素材について、絶対に失敗しない選び方を深掘りします。
硬質赤玉土vs普通の赤玉土
ホームセンターの園芸コーナーに行くと、安い赤玉土(14リットル300円程度)と、高い赤玉土(800円〜)が売られています。塊根植物には、必ず「硬質(こうしつ)」や「焼き」と書かれた高い方を選んでください。
安い赤玉土は、水やりを繰り返すとすぐに崩れて泥になります。泥になると通気性がゼロになり、根腐れ一直線です。有名なブランドで言えば「三本線」などが硬質赤玉土の代表格です。指で強く潰そうとしても潰れない硬さ、これこそが塊根植物の命を守るのです。
日向土と軽石の違い
宮崎県で採れる日向土(ひゅうがつち)は、ボラ土とも呼ばれ、軽石の一種ですが少し性質が異なります。表面に無数の細かい穴が開いており、排水性が抜群に良いのが特徴です。
一般的な白い軽石でも代用は可能ですが、日向土の方がやや保水力があるため、植物の根が水を求めて伸びようとする力を引き出してくれます。西日本の愛好家にとっては常識的な土ですが、東日本では手に入りにくい場合もあるため、その場合は通常の軽石(パミス)で代用しても構いません。
鹿沼土は使うべき?
酸性土壌を好むサツキやツツジによく使われる鹿沼土。水を含むと黄色くなり、乾くと白くなるので、水やりのタイミングが分かりやすいというメリットがあります。
塊根植物にも使えますが、赤玉土より軽く、水に浮きやすいという特徴があります。私は、アガベなどの重量がある植物には赤玉土メイン、根が繊細な植物には鹿沼土を少し多めに混ぜるなどして使い分けていますが、基本の「黄金比」レシピでは赤玉土メインで十分です。
ゼオライトの根腐れ防止効果
ゼオライトは、別名「根腐れ防止剤」として売られていることもあります。微細な穴が無数に空いており、アンモニアなどの植物にとって有害な物質を吸着・浄化してくれる作用があります。
必須ではありませんが、配合土に1〜2割混ぜておくことで、鉢の中の環境をクリーンに保つことができます。特に、夏場の蒸れが心配な方は、お守り代わりに混ぜておくことを強くおすすめします。
写真で解説!自分で土を作って植え替える手順
それでは実際に、自分で土を配合して植え替える手順を見ていきましょう。難しそうに見えますが、道具さえ揃えれば料理と同じくらいシンプルで楽しい作業です。
STEP1:道具を準備する
高価な道具は必要ありません。以下のものは100円ショップ(ダイソーなど)ですべて揃います。
- 土入れ(スコップ):筒状のものが使いやすいです。
- 大きめのトレー:土を混ぜるためのバット。
- フルイ:ステンレス製で網目のサイズが変えられるものが便利。
- 手袋:爪の間に土が入るのを防ぎます。
- 割り箸などの棒:植え付け時に土を突き込むのに使います。
STEP2:土をフルイにかけて混ぜ合わせる
まず、各用土をレシピの比率通りにトレーに出す…前に、必ずそれぞれをフルイにかけます。前述した「微塵抜き」です。驚くほど粉が出ると思いますが、心を鬼にして捨ててください。
微塵を取り除いたきれいな粒だけの土を、大きなトレーやバケツに入れ、手でよくかき混ぜます。このタイミングで、くん炭やマグァンプKなどの肥料も投入し、ムラがないようにしっかりとミックスします。
STEP3:植え付け(ウォータースペースの確保)
鉢底にネットを敷き、軽石(大粒)などの鉢底石を入れます。その上に、混ぜ合わせた「黄金比の土」を少し入れ、植物の位置を決めます。
植物を片手で支えながら、周りに土を入れていきます。この時、鉢の縁ギリギリまで土を入れないでください。上から1〜2cmほど空けておくことで、水やりの際に水が溜まる「ウォータースペース」を作ります。割り箸でザクザクと突きながら、根の隙間にもしっかり土が入るようにしましょう。
STEP4:最初の水やり(微塵を出し切る)

植え替え直後の水やりは、最も重要です。ジョウロで優しく、しかしたっぷりと水をかけます。
最初は茶色く濁った水が鉢底から出てきますが、これはまだ残っていた微塵です。この水が透明になるまで、何度も何度も水を流してください。透明な水が出るようになれば、鉢の中の通気性が確保された証拠です。
よくある質問Q&A:虫、カビ、再利用について
最後に、土に関してインスタグラムのフォロワーさんからよく頂く質問に回答します。
Q. 室内管理でコバエを発生させないためには?
A. 「有機質」を徹底的に排除しましょう。
腐葉土やたい肥が含まれていると、どうしてもコバエ(キノコバエ)が発生しやすくなります。今回紹介した黄金比レシピや、プロトリーフの「インドアグリーンの土」のような無機質用土を使用してください。さらに、土の中に「オルトランDX」という薬剤を混ぜ込んでおくと、防虫効果が劇的に高まります。
Q. 土の表面に白いカビが生えました…
A. 風通し不足のサインです。
土そのものというより、湿気がこもっていることが原因です。カビた部分の土をスプーンで取り除き、サーキュレーターなどで風を当てて乾燥させてください。また、土の表面に「化粧石」を敷くと、土が直接空気に触れないためカビの胞子が飛びにくく、見た目も良くなるので一石二鳥です。
Q. 古い土は再利用してもいいですか?
A. 塊根植物に関しては、新品推奨です。
一度使った土は、粒が崩れていたり、古い根が残っていたり、病原菌が潜んでいる可能性があります。一般的な草花ならリサイクル材を使って再利用もアリですが、高価でデリケートな塊根植物のリスクを考えると、数百円をケチらずに新しい土を使ってあげるのが一番の愛情だと私は思います。
まとめ:最高の土で、あなたのアガベグラキリスを一生モノへ
たかが土、されど土。植物にとって土は、私たちが住む家と同じです。住み心地の良い家(土)を用意してあげれば、彼らは必ず、最高のプロポーションと元気な成長で私たちに応えてくれます。
まずは今回紹介したおすすめの市販土から始めてみてください。そして、植物の声が少しずつ聞こえるようになってきたら、ぜひ「黄金比」の配合にもチャレンジしてみてください。土を混ぜている時のワクワク感こそが、園芸の醍醐味の一つでもあります。
この配合で育った植物の現在の姿
「本当にその配合で元気に育つの?」と気になる方もいるでしょう。
私のInstagramでは、文章だけでは伝えきれない、様々な情報を発信しています。
ぜひ一緒に最高の植物ライフを送りましょう!